外字について about EUDC
特にパソコンでいう「外字」とは、個人などで作成した、自由な字形を持つ「文字」のことです。
「そんなの使ったこと無いよ」とおっしゃる方が大半だろうとは思いますが、使ったことのある方でも
「昔、あったよねー」とか「今は、もう無くなったんじゃないの?」とか思っている人も多いようです。
しかしながら、現行の Windows 10 でも、ちゃんと使えます。
Windows 10 で「外字エディター」(eudcedit.exe)を使っているところ。(Windows 8.1 でもほぼ同様)
Windows Vista で「外字エディタ」(eudcedit.exe)を使っているところ。(Windows XP / 7 でもほぼ同様。Win 7 以降の表記は「外字エディター」)
(例示の字形(E000)は、Unicode 5.2 で新規登録されたものの、対応フォントが少なかった「ルーミー数字記号」の「1」をあらわしています。
ちなみに E000~E008 が「1~9」、E010~E018 が「10~90」、E020~E028 が「100~900」の数値をあらわしていた数字の字形です。)
Unicode では「私用領域」(PUA : Private Use Area) U+E000~F8FF の 6,400文字分 が、外字用として開放されています。
(旧来の Shift_JIS の場合は「ユーザー定義外字領域」といい、0xF040~F9FC の 1,880文字分が利用可能です。なお、ここでいう Shift_JIS は
より正確には「Shift-JIS-2004」(Shift_JISX0213)、「Microsoftコードページ932」(CP932) 由来の「Windows-31J」とも呼ばれるものです。
この Shift_JIS での外字領域1880文字は、Unicode では私用領域6400文字分の先頭1880文字分に引き継がれるよう割り当てられています。)
外字の字形は、ご利用のパソコンに1文字ずつ(またはまとめて)登録することで、文字として繰り返し使えるようになります。
ただ、そのためにはまず、外字を除いた パソコン等での「文字」の仕組みについて、いま一度 確認しておきたいところです。
(文字の仕組みを再確認する場合は、下のボタンを押せば 折りたたみ部分が展開表示されます。不要な場合は そのまま次へお進みください。)
パソコン等で「文字」を表示するには、個々の文字に振られた番号すなわち「文字コード」と、
そのコードごとに個別の字形を与えて、人間が目で見て読めるようにする「フォント」が不可欠なのでした。
外字を扱う場合でも、デジタル表示に必要不可欠な、文字コードとフォントの仕組みはそのままです。
ただ、文字コードとフォントとの間に「外字ファイル」と「リンク」という、2つの仕組みが加わります。
外字ファイル
外字の字形を定義可能なコード位置の区画( Unicode では「私用領域」、Shift_JIS では「ユーザー定義外字領域」)に対応し、
個人などのユーザーが自由にデザインする 個々の具体的な字形を、区画全体で一括して保存・管理します。
Windows では、同じ名前を持ち 拡張子の異なる 2種類のファイル([.TTE][.EUF])のペアを、
あたかも「ひとつの外字ファイル」であるかのように、必ず同時に扱います。
外字ファイルのペアは、異なる名前を付ければ、いくつでも作れますので
実際は、6,400文字(Unicodeの場合)という字数制限は、無いにも等しいものです。
外字ファイルは、所定のフォルダ(用途別の2箇所)に置かれている場合に限り、リンクの設定が可能です。
外字ファイルは、Windows付属の「外字エディタ」で 字形とともに 作成・複製できますが、外字エディタでは移動や削除ができません。
(当方アプリの「GaijiSupporter」は、常にペアで扱う必要のある外字ファイルを、複製・保存・移動・削除など、適切に管理できます。)
リンク (フォントとのリンク)
外字ファイルと特定のフォントとを、対応付け(紐付け)します。
これにより、外字ファイルに定義されたコード位置と字形が、フォントを通して、文字として表示されることになります。
特定のフォントとのリンクを設定する場合、外字ファイルはシステム所定の「EUDC」フォルダに置かれる必要があります。
また、初歩的かつ簡易的な機能として、フォントを特定せずに「すべてのフォントにリンクする」ことも選択できます。
この場合はシステムの「フォント」フォルダに置かれる既定の外字ファイル([EUDC.TTE],[EUDC.EUF])を使うことになりますが
そこではフォントファイルが優先となっており、外字ファイルは「不可視ファイル」となるため、扱いづらいのが実情です。
なお、すべてのフォント と同時に、特定のフォントとのリンク を持つ 別の外字ファイルもある場合、そのフォントでは、後者が優先されます。
リンクの情報は、パソコンの設定情報データベースである「レジストリ」という特殊な領域に保管されます。
レジストリを手作業などで直接扱うのは、その性質上 大変危険 な行為であり、とても一般にお薦めできるものではありません。
リンクの状況は、Windows付属の「外字エディタ」でも設定・確認できますが、わかりにくいのが欠点です。
(当方アプリの「GaijiSupporter」は、不可視な外字ファイルの管理や、リンクの確認・設定・変更・解除を 安全に、わかりやすくできます。)
フォント (外字の場合)
特に外字用のコード範囲について見た場合、フォントによっては
外字用のコード位置に フォント提供者が定義した 独自の字形 が存在している場合があります。
そのようなフォントは一般に、ユーザーが個人で作成する外字の利用には 向いていないといえます。
これは フォント提供者(ベンダー)独自の「ベンダー外字」と呼ばれるものです。この場合 一般の外字は「ユーザー外字」と呼んで区別します。
ベンダー外字は すでにフォントになっており、字形も定義位置も個性的で、ユーザー外字よりも優先的に表示されることが多くなっていますので
ユーザー外字との混在による混乱を避けるため、ベンダー外字のあるフォントについては、外字ファイルとのリンクは避けるのが賢明です。
(ちなみに、ベンダー外字の有無を簡単にチェックするには、Unicode なら「私用領域」内の表示を確認すれば済みます。
MS-IME の「IMEパッド」等を使ってもいいですし、当方アプリ「GaijiSupporter」のほか「dNetFontViewer」「UniCharFinder」も使えます。)
また、プロポーショナルフォントとも呼ばれる、文字幅が自動的に調整されるフォントもありますが
外字の場合は 文字幅が常に一定(等幅)なので、特に誤解のないよう、注意しておきたいところです。
(パソコンの外字は「漢字文化圏」とも呼ばれる東アジアの3か国-中国,日本,韓国-(CJK)を中心に、おもに異体字の表現などで発展してきた技術です。
すなわち、漢字,仮名,ハングル といった「正方形に収まる文字」が想定されているため、外字の形状も、必ず四辺の等しい正方形で表現されます。
ちなみに プロポーショナルフォントに収録された字形は 文字ごとに個別の文字幅が指定されているので [|] のように「詰まって」表現されますが、
外字の場合は(たとえプロポーショナルフォントにリンクさせて表示したとしても)文字ごとに個別の文字幅は指定できないため、
[|] のような 縦に細い字形であっても、正方形に基づく [ | ] のような 広めの文字幅が取られることになります。)
昨今の状況
外字は以前、普段よく使われる漢字の一部が異なるなどの、やや珍しい字形(異体字)などを表現するのに、よく使われました。
たとえば「高」の上部がハシゴ状になった「はしごだか」や、「吉」の上部が「土」の「つちよし」などです。(いずれも通称)
しかしながら現在では「髙」(U+9AD9 : CJK統合漢字) や「𠮷」(U+20BB7 : CJK統合漢字拡張B) などは このとおり
Unicode に登録済みの文字のため(目的の文字をきちんと探せることと表示フォントさえ対応していれば)そのまま使えます。
また、異体字形の多いことで知られる「邊」(U+908A) や「邉」(U+9089) なども、「異体字セレクタ」の併用と
対応フォントの利用で(あらかじめ決められた字形の中からの選択とはなりますが)かなりの表現が可能になってきています。
(上の2行は画像として表示しています。撮影に用いたフォントは花園明朝A)
また記号系に関しても、Unicode には「絵文字」(Emoji) が導入され、表現の幅を拡げるのに一役買っています。
これは日本のケータイ絵文字から派生したもので、すでに多様な種類がありますが、現在も頻繁に追加がおこなわれています。
本来は色がありませんが、WEBブラウザを介せば特定のカラーフォントが自動的に適用されるようになっていますので
お使いの環境では、次のような見え方になります。(異なる環境では表示される絵文字のフォントが異なりデザインも異なる場合があります。)
😀 😁 😂 😃 😄 😅 😭 😲 😰 😱 😜 😍 🚀 🚅 🚻 🚭 🛒
👦 👦🏻 👦🏼 👦🏽 👦🏾 👦🏿 (2段目の先頭以外には肌の色などを変化させるフィッツパトリック制御[1-2],[3],[4],[5],[6]を適用)
これら フォントを介した表示によって共通的に利用できる、Unicode の文字種が充実してきたことから
おもに ユーザー個人の裁量の範囲で用いる 外字の利用は、逆に 減少傾向にあるといえます。
外字の不利な面は、それだけではありません。
冒頭の画像にもあるように、字形は格子状のマス目を埋めることにより表現するので、ギザギザの荒さが目立つことと
正方形の幅が採られるため、余白を含めた文字幅が一定で、[I] のような縦に細い文字でも「詰めて書く」ことができないこと、
外字の字形を登録・編集するには、Windows においては事実上「外字エディタ」を用いるしか方法がないこと、
Office 系ソフトにおいては、環境や時期により 自分で登録した外字が表示できなくなる問題 が発生したことがあること、
技術的な理屈がわかりにくい上、他者と同じ外字を共有する際などには技術面での的確な理解が必要、などの点が挙げられます。
さて、マイナス面ばかりを書き連ねてきましたが、もちろん、外字にも有利な面はあります。
まず何といっても、自由な字形を自分で作って、それを文字として扱える、というのは、他にはない魅力です。
字形の作成段階では、自分の独創で一から作り上げる、DIY(日曜大工)的な楽しさが味わえます。
この作業は、十分な時間が取れない人や、少しでも面倒なことは避けたいと思ってしまう人、などにはお奨めできませんが
整えられた出来合いのものが多くなった昨今のパソコン作業の中では、なかなか得ることのできない、貴重な体験となります。
また、作った字形を利用する段階では、ワープロソフトなどで文章内に文字として組み込めるのはもちろん、
単独での 記号・スタンプ(印章)的な利用だけでも、文面に効果的な独自色を加えることができます。
自分で作った独自の外字を他者と共有するのも、理屈さえわかってしまえば、それほど難しいことではありません。
当方アプリ「GaijiSupporter」(外字サポーター)は、それらの際に必要となる、技術的な理解も得やすくなるよう作られていますし
字形デザインに用いる「外字エディタ」を、マス目の密度(外字の精度)を調節して起動したり、各種フォントとのリンク設定、
さらに、作った外字の ファイル管理、および 個々の文字に対する説明などの記録を残すような能動的な管理にも、力を発揮します。
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